缶バッジの衝動
2週間ほど前のある日。
その日は暑くて、外には出たくなかった。
でも休みの日だったから友達と遊ぶ約束をして、中野まで足を運んだ。
私から誘ったのだ。
いくら暑くても気の置けない友達と遊ばなければならない精神的状況というのがあり、そしてそれはそこそこの頻度で訪れる。
ときには暑さを無視してもいいほど、その欲求が強くなることもある。
私は、中野駅で電車を降りて北口改札を出る。
「着いたぞ」
そうLINEを送ってから、長い、人いきれに溢れたアーケードを歩き、サンモールへ入る。屋内は冷房が効いていて涼しい。
その時、友達から連絡が来る。
「着くのはえーな。10分くらい待っとけ」
「おけ」
サンモールでブラブラしてると富士フイルムのカメラ屋が目に入った。インスタントカメラが並べてある。滅多に使わないけど、こういうのはたまに重宝するんだよな。
あ、画像データをプリントする用のパソコン画面がある。どうせ大したことできないんだろうけど、暇だしちょっと触ってみようかね。座れるし。
画面を見て、最初に目に入ったのが、缶バッジを作れる機能だった。
んー、、、250円で小さめのが、350円で大きめのが作れると。ほお、スマホにある写真で作れるんだ。。。
え、安くね!?!?
これは何かしら作るべきじゃね!?!?
テンションが上がった。バカなのである。
バルクで作ればもっと安いんだろうが、スマホの中にある写真で作れること、待ち時間が20分しかないことを考えると、破格に思えた。
作るしかない。私はすでにスマホの写真フォルダを漁りだしていた。
そうして作られたのがこの3つの缶バッジである。
一つ目はこれだ。
輝夜月さん。絵になる。絵だし。
絵だから、絵になる。
好きだし。
今のところギリでガチ恋勢ではないと言えるのだが、この缶バッジを作ってしまった事でひとつボーダーを超えてしまった気がする。
でも、まだだ。これをどこかにつけ始めてからが本番だ。
あの喋り方が好きなんだよ。そんで喋ることもわけわかんねーんだけど、なんか何回も見てしまって、、、ってね、もうこれ以上彼女への恋慕について書くべきではないと私の中のアラートが大音量で鳴っている。
ハマってはいけない。ハマってはいけないんだ!!!(頭を掻き毟りながら
二つ目。
相田みつをさん、この方の書くことに最近は納得できないんだが、この言葉は気に入った。
当人にそのつもりはないだろうが、このダブルミーニング。
な?
要るやつだ。
そして最後に。
学位記である。
ちょうど前日、母が棚の奥のどこかで見つけたらしく、見せてきたので写真に撮ったのだ。
母はこの学位記の実物を見るまで、私が大学を卒業したことを信用してなかった。
大学を卒業したよと言ったら、母は、良かったねと発言したが、心がこもってないのは明白だった。
仕方ないからこの紙っぺら一枚(を仰々しい上っ面で包んだもの)を実家に持って帰って見せたら、真の喜びの顔をやっと見せた。
信用パラメータが多分マイナス値になってるんだと思う。unsigned int型のフィールドじゃなかったっけ?
だから久しぶりに見つけた時は感動もひとしおだったんだろう。私に見せようと、目立つところに置いてあった。
しかしきっと、そのありがたみも数日で霧散するだろう。そして現物はまた棚の奥底に、もう一生開かないであろう大量の「白鳩(分かる人には分かるだろう)」の束の奥に紛れ込む。
どうせなら全て捨ててしまえと思わなくはないが、こういったものが母の精神的安定におそらくは大きく寄与してるはずなので、勝手にどこにでも置けばいいと思う。
ではなぜ私はこの紙の写真を撮ったのか。
理由はただ一つ、私が自己申告でこの大学を卒業したと言ってもイマイチ信用されないからだ。
ポンコツは辛い。
そしてこれらは棚の奥にとりあえずの感じでしまい込まれた。
作ってよかったとは思ってる。